コロナ禍の2020年8月、サービス付高齢者向け住宅からグループホームへの引越当日、約5ヶ月ぶりに弟と引越し業者とともに母の部屋に入りました。
引越しということで、特別に入室を許可されたのは、この日が初めてでした。
そこで目にした光景は、あまりにも衝撃的でした。
テレビでよく見るような汚部屋に近い状態。窓は換気のために少し開けられていましたが、網戸も空いていました。そのせいで虫が入り、クモの巣がいくつも張られていました。
誰も触っていない、放置されていた証拠がそこかしこにあり、タンスの後ろにはカビまで生えていました。トイレも酷いものでした。
毎週必ず掃除していた部屋が、一気にこんな事に…。
誰が悪いということでもない。
でも、この状態で放置されていた現実に、言葉が出ませんでした。
母に対する申し訳なさ、悔しさ、悲しさ、怒り・・・いろんな感情が一度に押し寄せ、ただ立ち尽くすしかありませんでした。
いま思い起こしても、あれほどの憤りを覚えたのは初めてでした。
認知症で不安を抱えながら、母はこの部屋で過ごしていたのだと思うと、胸が締めつけられます。
蚊に刺され、蒸し暑く、不快だっただろうと想像するだけで、涙がこみ上げてきます。
「この環境で孤独でいたらそりゃ進行するよ、大事な時間をこんなところで過ごしたんだよ」と自分を攻める自分の声が聞こえました。
あの日の匂いと光景は、今も忘れられません。
それは、母の孤独と私の無力さを突きつけた現実でした。
次回は引越し時のできごとをお送りします。
つづく…
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