母と私

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第4回:母の引越し① 決断

父が他界して1年後の夏、母の引越しを決めました。レンジの中に温めたであろう冷凍食品が袋ごと入れっぱなしになっていたり、随分前にやめたはずのタバコを買っていたり─以前にはなかった行動が目立ち始めました。食事や火の元が心配になり、認知症の薬の管...
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第3回:母の変化ー父とのお別れ

父が亡くなったのは、母が認知症と診断されてから1年ほど経った頃でした。父と母はとても仲の良い夫婦でしたから、本来なら一番悲しいはずの母が、葬儀の場で泣くこともなく、服装を気にしたり、ぼんやりとしていた姿が忘れられません。父の死を頭では理解し...
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第2回:母の変化ー財布紛失事件

母が認知症を発症して10年。思い返すと最初の変化は「財布紛失事件」でした。誕生日に私が贈ったワインレッドの長財布。何度も「なくなった」と電話が鳴り、そのたびに私と弟で探し回る。冷蔵庫の裏や靴下の中からお札が出てきたときには、弟と「俺ら試され...
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第1回:信じたくない認知症 ― 母の診断を受けて

ある日、母が「認知症」と診断されました。おかしな言動や行動が続き、何度も病院へ。行くだけでも一苦労で、母はいつも「どこも悪くない!なんでそんな検査を受けなきゃいけないの?」と抵抗していました。72歳で受けた診断結果は、やはりショックで「信じ...