認知症

母と私

第10回:母の部屋の衝撃

コロナ禍の2020年8月、サービス付高齢者向け住宅からグループホームへの引越当日、約5ヶ月ぶりに弟と引越し業者とともに母の部屋に入りました。引越しということで、特別に入室を許可されたのは、この日が初めてでした。そこで目にした光景は、あまりに...
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第9回:マスクと花 ― コロナが奪った母との時間①

コロナ禍になっても、いつも父の仏壇用の花と母へのおやつを届けました。けれど、母は仏壇の花を替えることさえ、もう難しくなっていて・・・。「マスク」と「花」は、あの頃の私たちの象徴です。面会10分、玄関先だけの再会2020年の3月の終わり頃だっ...
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第8回:母とお花見、そして老犬ワンコの想い出

2008年頃から、母と二人で毎年お花見に行くようになりました。私が離れて暮らすようになり、「会うためのイベントのひとつ」として続けてきた行事です。最初は母の運転で、近くの公園へ。実家の犬の散歩ついでの軽いお花見でしたが、いつの間にか私がお弁...
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第7回:最後の母娘旅で見た、母の思いがけない涙

母との最初で最後のふたり旅は、近場の温泉でした。何かあってもすぐに家族に来てもらえるように、あえて近くを選びました。母は昔から「旅行に行きたい」とよく言っていました。私がその願いを叶えてあげるのが、まさか認知症になってからになるとは思いませ...
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第6回:認知症の母とカラオケBAR

サービス付高齢者向け住宅への引越を終え、最初は落ち着かない様子の母でしたが、次第に慣れていきました。認知症ではない方もいる中で、何でもすぐに忘れてしまう母は馴染めず、居心地の悪さを感じていたようです。それでも私は「気にしないようにしよう」と...
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第5回:母の引越し②抵抗

引越し当日は弟と私と母の3人。とても引越しとは思えない重い雰囲気の中で作業が始まりました。母は当然超不機嫌で、いまにも襲いかかってきそうな形相です。私はもくもくと作業をしていましたが、母は作業をしようとせず、不服の言葉ばかりが飛んできます。...
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第4回:母の引越し① 決断

父が他界して1年後の夏、母の引越しを決めました。レンジの中に温めたであろう冷凍食品が袋ごと入れっぱなしになっていたり、随分前にやめたはずのタバコを買っていたり─以前にはなかった行動が目立ち始めました。食事や火の元が心配になり、認知症の薬の管...
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第3回:母の変化ー父とのお別れ

父が亡くなったのは、母が認知症と診断されてから1年ほど経った頃でした。父と母はとても仲の良い夫婦でしたから、本来なら一番悲しいはずの母が、葬儀の場で泣くこともなく、服装を気にしたり、ぼんやりとしていた姿が忘れられません。父の死を頭では理解し...
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第2回:母の変化ー財布紛失事件

母が認知症を発症して10年。思い返すと最初の変化は「財布紛失事件」でした。誕生日に私が贈ったワインレッドの長財布。何度も「なくなった」と電話が鳴り、そのたびに私と弟で探し回る。冷蔵庫の裏や靴下の中からお札が出てきたときには、弟と「俺ら試され...
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第1回:信じたくない認知症 ― 母の診断を受けて

ある日、母が「認知症」と診断されました。おかしな言動や行動が続き、何度も病院へ。行くだけでも一苦労で、母はいつも「どこも悪くない!なんでそんな検査を受けなきゃいけないの?」と抵抗していました。72歳で受けた診断結果は、やはりショックで「信じ...