第18回:緊急手術

母と私(介護・家族の物語)

この時のことはいつ思い出しても緊張します。

入院して何日目だったでしょう。病院から電話があり、朝の検査の数値が大幅に急上昇しており、急遽転院することになったと。今から近くの外科手術が可能な病院へ救急車で搬送するとのこと。朝、会社に到着してまもなくのタイミングでした。

そして必須な業務だけを片付け、慌ただしく転院先の病院へ向かいました。向かっている最中にも転院先から何度も連絡が入り、急遽手術が必要とのことでした。前の病院で苦しんだ時間は何だったのだろう。最初から外科対応可能な病院に搬送されていればこんなに長い時間、痛く苦しまずに済んだのではないか、と思いました。と同時に手術を受ければ、手術が成功すればなんとかなるかも知れない!との希望が湧いてきました。

病院に到着するとまず執刀医から手短に説明があり、同意書にサインしました。

とにかくお腹を開けてみないと状況はわからないが
開腹手術が必要であり
痛みはこれが原因だと想定できること

食事を摂れていない生活が続いていたこともあり
母の体力にも不安はあるが手術しなければならないこと

そして
ご高齢だけにもしものことも想定してください、という説明でした。

母はストレッチャーに寝かせられ、頭にはヘアーキャップを被っていました。どんな表情だったのか…悲しいことに今ではもう思い出せません。会話にはならず、私が一方的に頑張ってね、大丈夫だから、待ってるからと言った言葉をかけたと思います。テキパキとした執刀医を信用し、痛みから解放される、きっと大丈夫だと思うしかありませんでした。

3時間の予定でしたが、約2時間後、手術は成功しました。病棟への移動の一瞬だけ手術を終えストレッチャーに乗った母を見送る形で、母の顔を見ることはできましたが、麻酔が効いていて眠っている状態でした。インフルエンザの流行でここから病室に入ることは許されず、帰ることになりました。しかしこの時点で、手術が成功したことの喜びと安心感で、私は良い方向に向かっていると思ったのです。
執刀医からはまだ危険な状態に変わりはありません、と言われていたにも関わらず…。

つづく…

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