第6回:認知症の母とカラオケBAR

母と私

サービス付高齢者向け住宅への引越を終え、最初は落ち着かない様子の母でしたが、次第に慣れていきました。
認知症ではない方もいる中で、何でもすぐに忘れてしまう母は馴染めず、居心地の悪さを感じていたようです。それでも私は「気にしないようにしよう」と心でつぶやきました。

平日はデイサービスへ。土日のどちらかは私が「通い介護」のような形で支える日々。薬や食事の心配がなかったのは本当に助かりました。

当時はコロナ前で外出も自由。母と一緒に徒歩圏のスーパーへ買い物に行ったり、近所でランチをしたり、美容室に一緒に行ったり、春には恒例のお花見や少し遠出もできました。

カラオケBAR発見👀

そんなある日、母が徒歩3分のところにカラオケBARを見つけました。
「行ってみたい!」と目を輝かせる母。私はそういう場所が苦手で、初めてのときは弟にお願いし、弟は何度か夜に連れて行ってくれました。夜に通い続けるのは難しいので事情を話すと、BARのママとマスターが快く「夕方の早い時間に来てもいいですよ」と受け入れてくださったのです。本当にありがたいことでした。

家に帰りたい、こんなとこに閉じ込めて…と、不穏な日も少なくありませんでした。
でも「カラオケに行けるよ」となると、すぐに上機嫌になってくれる母でした😊
そういう意味でも、本当にありがたい時間でした。

あの頃の私はただ必死でした。
でもいま振り返ると、母を受け入れてくださったBARのママやマスター、お客さんやまわりの方々に恵まれていたんだなとしみじみ思います。
そのおかげで私も頑張れたんだと、感謝の気持ちでいっぱいです。

歌える悦び、充実した母の最後の輝き

それからは母をBARへ送り、母はカラオケを楽しみ、私はその間に部屋の掃除をする――そんな流れができました。迎えに行くとマスターに手拍子され、ご機嫌の母「まだ帰りません、歌いたいの!」と駄々をこねることもしばしば😅何時間でも歌える母でした。

母は歌が特に上手くカラオケでは目立ち、すぐに友人が出来ました。母は忘れてしまうのですが、周りの方にとても温かく接していただきました。カラオケを楽しむ母の姿が、あんなにも短い時間で終わってしまうなんて、その時は思いもしませんでした。今思うともっと母が楽しめるカラオケの時間をたくさん作ってあげればよかった、旅行ももっと早くから行けたら…後悔は尽きません。


やがて訪れるコロナ禍。母にとっての充実した時間が奪われ、施設の高齢者や家族にとってどれほど辛いことだったか…。母の認知症は一気に進んでしまいました。

母とふたりで行った、最初で最後の母娘旅行も、コロナ直前のこの時期のことです。
次回は、その旅行について書こうと思います。

つづく…

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