2008年頃から、母と二人で毎年お花見に行くようになりました。
私が離れて暮らすようになり、「会うためのイベントのひとつ」として続けてきた行事です。
最初は母の運転で、近くの公園へ。
実家の犬の散歩ついでの軽いお花見でしたが、いつの間にか私がお弁当を作って行く本格的なお花見が恒例になっていました。
父の長期入院や施設での生活が始まった頃からのことです。
老犬ワンコとの想い出
最初の頃は、犬も一緒でした。
母の犬——いえ、弟と私が折半で飼い始めた犬。私たちが独立したあと、母の良き相棒としてがんばって長生きしてくれました。
その老犬ワンコのかわいかったこと。もともと温和で臆病な子でした。
2010年の春、母の運転で車で10分ほどの公園へ。
芝生でお弁当を広げると、老犬ワンコもシートにちょこんと座りました。
すると、いつの間にかシートごとゆっくりと滑り出して…(笑)。
傾斜は緩やかで、すぐに止まりましたが、ワンコはそのままの姿勢でじーっとこちらを見ていました。
その年の夏、18歳で旅立ったワンコ。
この“滑るワンコ事件”は、母と何度も回想しては笑い合った、幸せな想い出です。
お花見を奪うコロナ禍
その後、母の運転がバスへと変わりながらも、
形を変えて毎年お弁当を持ってお花見に出かけていました。
ところが2020年、コロナという“行けない理由”ができてしまいました。
当然のように毎年行くのが当たり前だっただけに、行けなくなったときは本当に悲しかったです。
母もきっと楽しみにしていたはず。
誰が悪いわけでもない、訴える先もなく、ただもどかしくこの制限を恨みました。
「来年は行けるよね」と祈るような気持ちでしたが、
施設入居者の外出制限は特に厳しく、その祈りは届きませんでした。
コロナ禍の数年間、サクラを見るたびに切なく、やりきれない気持ちになりました。
2020年の春、家族との面会も制限され、母の生活は大きく変化しました。
その結果、認知症の進行が急速に早まり、サービス付き高齢者住宅からの引越しを余儀なくされたのです。
つづく…
  
  
  
  

コメント